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9月23日にアメリカ・ニューヨークにおいて、潘基文国連事務総長のイニシアチブによる国連気候サミットが開催された。これに合わせて、21日、40万人もの人々がニューヨークの街を歩き、気候変動対策を訴えた。

サミットでは、各国首脳や各界のリーダーがスピーチを行い、自国や自分たちの気候変動に対する取り組みを訴えた。その中で、日本からは安倍首相が出席し、スピーチを行った。

しかし、安倍首相のスピーチ内容は、気候変動対策におけるリーダーシップからは程遠いものであった。言及された適応イニシアチブや、1万4千人の人材育成支援は、キャパシティ・ビルディングという地味ながらも極めて重要な分野での貢献をうたったものであり、それに関しては評価はできる。しかし、肝心の温暖化を緩和するために重要な3つの点において、安倍首相のスピーチは極めて不十分であったと言わざるを得ない。

1つ目は、2020年目標の見直しについて何も語らなかったことである。昨年のワルシャワ会議(COP19)において、日本は既存の2020年目標を大幅に引き下げた暫定の2020年目標を発表し、世界中からの非難を浴びた。暫定として発表した以上、見直しが期待されているが、今回のスピーチでは全く言及もされなかった。

2つ目は、今後、国際的な議論の中心になっていくと予想される2025年/2030年に向けての温室効果ガス排出量削減目標草案の提示期限を明示しなかったことである。アメリカやEU、そして今回中国までがこの2015年3月までに出すと明言している中、安倍首相は、「できるだけ早期に」と抽象的に述べるにとどまり、2015年3月という具体的な時期への言及を避けた。提示期限が遅れれば、国際社会が2015年末のパリでのCOP21で新しい国際枠組みに合意するための政治的な勢いに、日本が大きく水を差すことに繋がる。

3つ目は、グリーン気候基金(GCF)への貢献額について、検討しているという以上の言及がなかった点である。GCFは、今後の気候変動対策に関する国際支援の中心となることが目されている。韓国、ドイツなど、複数国がGCFへの拠出を表明した。日本は、二国間支援を主とする160億ドルの拠出については積極的であるが、肝心なGCFに対する支援への言及はなかった。途上国支援に繋がるGCFへの拠出は、それ自体としても重要であるだけでなく、途上国との信頼構築の観点からも重要である。
最も肝となるこれら3つの課題について、安倍首相のスピーチは、明瞭な言及を避けていた。このことは、国内での気候変動対策全般に対する議論の欠如を明瞭に反映してしまっている。

今回の国連気候サミットは、様々な国々が、自治体が、ビジネスが、人々が、既に将来の気候変動対策に対してアクションを起こし始めていることを示した。

日本もぐずぐずしてはいられない。まずは、2030年目標策定に向けた議論を国内で開始することである。首相が述べた「できるだけ早期に」という提示期限は、来年のパリ会議ギリギリであっていいはずがない。帰国後直ちに議論の開始に着手すべきである。

日本も、2015年の新しい国際枠組み合意と、効果的な気候変動対策の実施に向けて、国内での議論を本格化させるべき時が来ている。

参考資料

WWFインターナショナルの声明(英語):http://wwf.panda.org/?229499/UN-Climate

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