CANとCAN-Japanは、麻生太郎財務大臣あてに、G20財務大臣会合に際して次のレターを提出しました(原文は英語)。
財務大臣麻生太郎様
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、人々の健康と生活は、現実かつ緊急のリスクにさらされ続けており、その社会経済的な影響に対処するためには、断固とした行動と戦略的な財政政策が求められています。
COVID-19は、私たちの社会が直面してきている気候非常事態、生物多様性の喪失、格差の拡大といった様々な危機に加えて発生したものです。COVID-19は、否応なく私たちの経済のあり方を変えるでしょうが、正しい対策をとれば、より良い未来を創ることができます。我々は、日本政府の財政的措置において社会的保護が焦点となっていることは理解していします。しかし、大きな懸念を抱いています。つまり、日本政府のエネルギー対策は、長期的な視野に立って行われていません。また、グリーンな次世代型のエネルギーシステムを実現する持続可能な開発の枠組みに沿った形で実施されていません。
私たちは、日本政府のイニシアチブである新型コロナウィルスからの復興と気候変動・環境対策に関する「オンライン・プラットフォーム」の開催を歓迎します。このような困難な時代には、具体的かつ野心的な国内政策に裏打ちされた、国際的なリーダーシップが必要です。そしていかなる経済刺激策も脱炭素社会への転換を加速させるものでなければなりません。その支援の対象から化石燃料の利用を拡大させるものを除外しなければなりませんし、再生可能エネルギー、省エネルギー、公共交通、効率的な住宅といったグリーン投資を重点的にしなければなりません。また、東京電力福島第一原発事故を経験した日本では、原子力からの脱却を前提とした上で、二酸化炭素の大量排出源となっている石炭火力発電の廃止を加速させなければなりません。
このような困難な時代にあっては、国内的にも国際的にも、よりレジリエントな未来に向けたリーダーシップが必要です。そこで、麻生太郎財務大臣に、国際的なリーダーシップを発揮するよう要請します。7月18〜19日に開催されるG20財務大臣サミットはその機会の1つです。G20財務大臣会合において、公正でグリーンな経済再生を求める強いメッセージが確実に出されるよう日本として働きかけること、必要ならG20声明とは別に、グリーンな経済再生のための野心的な声明を独自に発表することを求めます。
経済を持続可能なものへと転換させるには、次の10年間が決定的に重要です。コロナ危機に対応するために使われる資金は、良い方向にも悪い方向にもつながりうるものです。今、緊急事態・安定化・回復期という危機の3つの段階に対応する総合的なアプローチを打ち立てるためには、先見性とビジョンが不可欠です。
長期的なビジョンをもって取り組まなければ、政府が財源を枯渇させるような景気刺激策を採用してしまうリスクも高まります。
多くの国でコロナ禍の経済危機から経済再生の段階に移りつつある今、120以上の国々の1300以上の団体からなるClimate Action Network(CAN:気候行動ネットワーク)とその日本の集まりであるCAN-Japanは、持続可能で公正な未来をつくるため、麻生太郎財務大臣に、以下の取り組みを求めます。
- コロナ禍に対する経済再生策は、気候危機対策のため、パリ協定の1.5℃目標と確実に整合するようにすること。地球温暖化を1.5℃未満に抑制することに貢献するとともに、温室効果ガスの排出を将来にわたって固定化(ロックイン)させないようにすること。
- コロナ危機に対する政府のあらゆる対応の中心に衡平性と公正な移行(ジャスト・トランジション)を確実に据えること。
- コロナ禍からの経済再生策において、化石燃料インフラ、道路の拡充、航空・自動車産業といった、気候変動の観点から問題のある産業への支援を行わないこと。ただし、ゼロエミッション車への転換の支援など、脱炭素化につながるものを除く。
- 化石燃料補助金を廃止し、生物多様性の喪失と自然生態系の崩壊を止めるとともに、省エネルギーと再生可能エネルギーを促進すること。気候と衡平性の観点から必要とされる、社会的に温室効果ガス排出を減らす効果が見込める水準の炭素価格(カーボン・プライシング)が確実に導入されるようにすること。
- パリ協定の1.5℃目標に整合するよう、石炭、石油、ガスの消費を減らす目標を導入すること。
タズニーン・イソップ、Climate Action Network International代表
平田仁子、Climate Action Network Japan代表