共同声明

日本政府は、2020年増加目標を撤回し、野心的な目標の再提出を!

2013年11月15日(ポーランド・ワルシャワにて)

「環境・持続社会」研究センター足立治郎
気候ネットワーク平田仁子
WWFジャパン山岸尚之
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議早川光俊
FoEJapan小野寺勇利

本日、日本政府は、2020年の削減目標を「2005年度比3.8%削減」とすることを発表した。2005年度の排出量は、1990年比で7.1%増加しており、今回の日本の2020年目標は、1990年比では3.1%増となる。すなわち、今回の日本の2020年目標は、削減目標ではなく「増加目標」である。
2009年9月、日本政府は国連気候変動サミットで、2020年25%削減目標を公約した。25%削減目標を放棄し「増加目標」とすることは、国際的な背信行為である。

現在、ここポーランド・ワルシャワで、気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)が開催されている。最大の課題の一つは、平均気温の上昇を2℃未満に抑制するために必要な排出量との乖離(ギャップ)を解消することである。そのために、ダーバンプラットホーム作業部会(ADP)で、各国の2020年目標を引き上げるための交渉が行われている。こうした中での今回の日本政府による増加目標は、各国の交渉に水をさし、交渉の足を引っ張るという大きな悪影響を及ぼすものである。

2011年3月、福島第一原子力発電所は、3基の原子炉が同時にメルトダウンする、国際原子力事象評価尺度(INES)レベル7の事故を起こした。今回の増加目標の背景には、温室効果ガスの削減を原発に頼ってきたことがある。

しかし、日本のNGOsの検討では、省エネを進め、エネルギー源を再生可能エネルギーに転換することにより、原発に頼らず2020年に大幅な削減が可能との結果になっている。
WWFジャパンのエネルギーシナリオでは、エネルギー起源のCO2排出量を1990年比で25%削減することが可能であることを示している。2020年時点で原発をゼロとするために、化石燃料で代替したとしても、約18%〜22%の削減が可能との結果になっている。
気候ネットワークの分析でも、原発ゼロを前提に、省エネ・再生可能エネルギーの推進、及び燃料転換によって、2020年に26%の削減が可能との結果を得ている。
CASAが独自に開発した「CASA2020モデル」での検討では、全原発を即時に廃止しても、2020年に25%の削減が可能で、経済への影響もほとんどないとの結論になっている。

COP18で、日本政府は京都議定書の第2約束期間の削減目標を拒否し、京都議定書から事実上離脱した。加えて増加目標を掲げることになれば、日本は世界で地球温暖化防止にもっとも消極的な国との評価を受けることになる。
日本政府は、増加目標を撤回し、改めて今気候変動対策のために日本が必要なこと・できることを検討し、野心的な目標を再提出すべきである。