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経済産業省は、本日(7月21日)開催された第46回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会において、エネルギー基本計画改正案の素案を公表しました。この素案をもとに、今後、パブリックコメントに付される政府案がまとめられると考えられます。公益財団法人 自然エネルギー財団では、あらためて政府案全体に対する見解を表明する予定ですが、特に議論が集中してきた2030年の電源構成案に関するコメントは以下のとおりです。

エネルギー基本計画素案(2030年電源構成案)について

今回のエネルギー基本計画の改訂には、2030年までに温室効果ガスを46%削減し、更に50%削減の高みをめざすという新しい目標に整合するとともに、2050年カーボンニュートラルへの道筋を明らかにすることが求められている。本日、公表された電源構成案は、従来の計画より前進した部分がある反面、依然として旧来のエネルギー政策の限界を克服できていない部分が色濃く残されている。

(1) 自然エネルギー(再生可能エネルギー)に関して、今回の計画に「最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組」むことが明記された事は重要である。エネルギー基本計画の改訂を巡るこれまでの議論の中で、多くの企業・自治体が40~50%程度の高い自然エネルギー導入目標の設定を求め、当財団や自然エネルギー事業団体は、大幅な導入拡大の可能性があることを実証的に示してきた。自然エネルギー最優先の原則が明記されたことは、こうした声を反映したものとして評価できる。
具体的な電源構成案(他の電源同様、暫定値との位置づけ)は、約36~38%程度とされている。これは、これまでの22~24%に比べれば10数ポイントの引き上げとなるが、欧州各国、米国の先進州が掲げる50~70%という2030年目標に比べれば、依然として低い水準にとどまっている。
計画素案は、「この水準は、キャップではなく、今後、現時点で想定できないような取組が進み、早期にこれらの水準に到達し、再生可能エネルギーの導入量が増える場合には、更なる高みを目指す」と述べている。パブリックコメントに向けた政府案のとりまとめに向け、更に意欲的な目標の提案を求めるとともに、自然エネルギー電力の導入加速に必要な、電力システム改革、一連の規制改革、カーボンプライシングの導入などの施策を早急に実行することを求める。

(2) 原子力発電の割合は従来と同じ20~22%に据え置かれたが、周知のようにこれまでに再稼働した原子炉は10基にとどまっている。この水準を実現するためには、未稼働の17基をあわせた27基が稼働し、これまでの実績を大きく超える80%という高い設備利用率(原発事故前10年の平均は67.8%)の実現を想定することになる。27基の中には、今後新たに60年運転の許可を得なければ2030年に運転できない原子炉が8基含まれている。原子力発電の再稼働に国民の同意は得られていない。20~22%という目標は実現が極めて困難であり、現実にはこれを大きく下回る可能性が高い。
今回の計画素案にも明記されたとおり、原子力発電への依存度を可能な限り低下させることは、福島第一原子力発電所事故を受けた日本のエネルギー政策の大前提である。根拠のない原子力発電の高い目標を設定することは、この前提に全く反している。

(3) 今回の電源構成案は、2030年においても石炭火力発電を約19%程度利用するとしている。「高効率」と称するものであっても、二酸化炭素排出量は「非効率」発電と殆ど変わらない。USC(超々臨界)だけでなく、計画素案が技術開発の推進を明記するIGCC(石炭ガス化複合発電)、IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)であっても、天然ガス発電の1.7~2倍の二酸化炭素を排出する。だからこそ、日本以外の先進諸国はCCSが設置された場合以外は、全ての石炭火力のフェーズアウトを進めている。
石炭火力の利用継続を明確にした今回の電源構成案は、気候危機回避に取り組む日本の姿勢の真剣さに疑いを持たせるものと言わざるを得ない。

自然エネルギー財団が2020年8月に公表した「2030年エネルギーミックスへの提案」では、自然エネルギーが電力供給の45%を供給する「持続可能なエネルギーミックス」を提起するとともに、これにより、日本のエネルギー政策の原則とされてきた「S+3E」の要素である安全性、安定供給、環境適合、経済性の全てを向上しうることを示した。エネルギー基本計画改正案には、より踏み込んだエネルギー転換の姿が示されることを求める。

参照元

エネルギー基本計画素案(2030年電源構成案)について