<プレスリリース>

COP26閉幕 1.5℃目標に向けてパリ協定を完全実施へ
日本は石炭火力維持政策を見直し、目標を引き上げるべき

2021年11月13日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

11月13日(グラスゴー時間)、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、厳重なコロナ感染対策が行われる中、会期を1日延長して「グラスゴー気候合意(Glasgow Climate Pact)」を採択し、閉幕した。パリ協定を完全実施し、気候変動の影響を最小化するため、不十分ではあるが、重要な一歩を踏み出すこととなった。

COP26合意は、2℃目標を超え、より安全な1.5℃目標をめざす決意を示すものである。1.5℃目標のためには2010年比で2030年までにCO2を45%削減し、2050年頃までにネットゼロを達成し、その他の温室効果ガスも大幅に減らす必要があるとの科学的知見も確認された。すでに世界平均気温が産業革命前から1.1℃上昇し、各地で甚大な気候災害をもたらしていること、IPCC第6次評価報告書が1.5℃の気温上昇でもさらに甚大な影響がもたらされることも盛り込まれた。また、各国政府が国別約束(NDC)の2030年目標を遅くとも2022年までに強化することを求めるとともに、この10年が決定的に重要だとして、さらなる削減強化のための作業計画を開始することを決定した。また、パリ協定の詳細運用ルールのなかで残されていた市場メカニズム(6条)と共通の約束期間、また、損失と被害、気候資金、適応に関しても、妥協の末に合意された。

蒸気機関を生んだワットの拠点として知られ、再生可能エネルギーとアートの脱炭素都市として再生しようとしているグラスゴーでは、連日、世界中の若者たちが安全な未来と気候正義を求める声をあげていた。その中で複数の国が目標を引き上げたが、今も、各国の排出削減目標の水準は不十分であり、1.5℃への道筋を確実なものとするには至っていない。しかし、パリ協定の精神に則り、1.5℃のために目標と対策を不断に強化し続ける決意は示した。COP26を通して、世界は脱石炭に大きく踏み出し、2050年ネットゼロに向けて石油・ガスのフェーズアウトの国際イニシアティブも動き出した。政府だけでなく、市民社会、自治体、ビジネス、ユースなどの非国家主体が、すべてのセクターで脱炭素を加速させていることを世界に発信したCOPでもあった。

他方、今会合での日本は、気候資金の新たな積み増しを除き、その貢献はほとんど見えなかった。岸田首相は1.5℃目標や脱石炭・脱化石に言及せず、アジア諸国への支援として火力発電の水素・アンモニア混焼を強調し、「本日の化石賞」を受賞するなど、国際的な批判にさらされた。今回、決定の中で「排出削減対策がとられていない(unabated)」石炭火力発電の削減に言及したことは、このプロセスでは初めてであり、特に日本にとって重要である。ここで言う排出削減対策とは、国際的にはCCSを意味するのであって、水素・アンモニア混焼なども含むとするのは、1.5℃目標と整合しない、日本政府独自の解釈である。エネルギー基本計画では2030年の電源構成で石炭火力は19%も残され、水素・アンモニア混焼も盛り込まれている。その実際の排出削減効果はわずかで、技術的実現可能性や経済的合理性もない。1.5℃の限界に近づいている残りのカーボン・バジェットを石炭火力発電で浪費する余地はない。すべてのセクターでいかに早くスマートな脱炭素経済社会を築くか、その競争は既に始まっている。日本政府は、再エネ100%への公正な移行をめざして、ただちに石炭火力維持政策を見直し、グラスゴーが呼びかける1.5℃目標のため、2030年目標の引き上げと対策強化の検討を急がねばならない。

以上

 

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【プレスリリース】COP26閉幕 1.5℃目標に向けてパリ協定を完全実施へ 日本は石炭火力維持政策を見直し、目標を引き上げるべき(2021/11/13)

 

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