2015年パリ合意に向けて、市民・NGOにできることは?

2015年2月14~15日、気候ネットワークが全国シンポジウム「市民が進める温暖化防止~ クライメート・アクション・ナウ!~」を開催しました(共催:CAN-Japan)。このシンポジウムでは2015年パリ合意で地球温暖化防止の国際的な枠組みをつくるためにできることについて、様々な視点からの発表が行われました。

写真:シンポジウムであいさつする、在日フランス大使館のポール・フリアさん

写真:シンポジウムであいさつする、在日フランス大使館のポール・フリアさん

 

CAN-Japanの関連企画としては、初日のディスカッション1「世界はパリ合意に向けて動いている~日本の役割は~」と、2日目の分科会4「2015年パリ合意に向けたNGO提言」がありました。

 

ディスカッション「世界は2015年パリ合意に向けて動いている~日本の役割は?~」

  • 「リマ会合の結果とパリ会合に向けた進展」亀山康子さん(国立環境研究所)
  • 「日本の気候変動政策課題」平田仁子さん(気候ネットワーク)
  • 「COP21とビジネス」末吉竹二郎さん(国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問)

初日のディスカッションでは、亀山康子さん、平田仁子さん、末吉竹二郎さんにスピーカーとしてご登壇頂きました。

まず、リマ会合の結果とパリ合意に向けての日本の役割について報告がありました。

亀山さん:今年2015年11~12月のCOP21では、2020年以降の気候変動に関する法的枠組みに合意することになります(パリ合意)。長期的な温暖化対策が決まるため、この合意は非常に重要です。昨年12月のCOP20リマ会合ではパリ合意に向けての交渉が行われました。最低限の合意文書案はできたものの、COP21の事前協議(各国が出した温室効果ガス排出削減目標案をCOP21より前に公式に相互検証すること)の機会が失われるなど多くの課題を残すことになりました。

平田さん:パリ合意に向けて日本政府はあまり温暖化対策に積極的ではありません。特に、温室効果ガス削減目標案の提出が遅れる見込みであることや、CO2排出量の多い石炭火力発電を推進することは、国際交渉の足を引っ張っています。日本の温暖化対策が消極的である理由として、原発停止後の日本政府のエネルギーミックスが明確でないということが挙げられています。日本は気候変動とエネルギー問題を統合的に議論し、早急に野心的な温室効果ガス排出削減目標案を策定することが必要になります。

末吉さん:すでに世界では環境製品への投資が進み、環境市場も急速に拡大しています。たとえば2014年の日本における新車販売台数ランキング上位は、軽自動車やハイブリッドなど、燃費の良いエコカーが独占しました。化石燃料への投資を取りやめる、ダイベストメントの動きもあります。世界のビジネスはすでに環境中心に動き出しており、この流れが変わることはありません。日本もこの環境中心の流れに乗り遅れないようにする必要があります。

2015年パリ合意に向けて、日本も貢献を

人類の命運をわけるとも言われる2015年パリ合意。この成功に向けて、世界の動きを見極め、日本もその役割を果たすべきです。まずは、2020年以降の温室効果ガス排出削減目標案を「2030年までに1990年比40~50%削減」という水準で策定し、早期に(3月中に)提出するべきです。

 

 

分科会4「2015年パリ合意に向けたNGO提言~気候変動対策と脱原発を両立する道~」

  • 佐藤潤一さん:グリーンピース・ジャパン
  • 足立治郎さん:「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
  • 松原弘直さん:環境エネルギー政策研究所(ISEP)
  • 早川光俊さん: 地球環境市民会議(CASA)
  • 森下麻衣子さん:オックスファム・ジャパン
  • 平田仁子さん:気候ネットワーク

分科会4「世界は2015年パリ合意に向けて動いている~日本の役割は?~」スピーカー

 

2日目の分科会ではCAN-Japanのメンバー6団体が、パリ合意に向けた団体ごとの提言を行いました。パリ合意に向けて、議論になったテーマは大きく分けて3つあります。

原発なしでもCO2排出量は削減できる!――平田さん、早川さん

現在日本政府は再生可能エネルギー推進にブレーキをかけつつある一方、石炭火力発電所の新増設や原子力発電所の再稼働を進めています。しかし、気候ネットワークの作成したエネルギーシナリオでは原発の稼働がゼロでも、2050年までに温室効果ガスを80%削減することができます。また、CASAのモデル分析によると、原発稼働ゼロで温室効果ガスを大幅削減したとしても、GDPにほとんどマイナス影響を与えることはありません。

日本は2015年3月までに温室効果ガス削減目標案を提出することが重要です。そのうえで早期に「2050年までに80%削減する」「2030年までに40~50%削減する」という目標を掲げることで、産業界も再エネや省エネへの長期投資がしやすくなります。

 

気候資金の使い道の明確化を!――森下さん、足立さん

温室効果ガス削減は日本国内だけでやってもほとんど意味はなく、世界規模での視点が重要になります。地球温暖化の影響は食糧危機などを誘発するため、途上国の貧困層ほど温暖化の被害は大きくなります。このため温暖化対策においては、先進国から途上国への資金の拠出(支援)も重要であり、日本政府の果たすべき役割です。ただ、現在、資金の使い道が適切でないものも存在します。たとえば、日本は温暖化対策のための途上国支援の資金を、石炭火力発電の増設に使っていました。また、途上国への支援資金を先進国がどのように分担して負担するかも重要です。

 

再生可能エネルギーで温暖化対策を!~企業・地方から~――松原さん、佐藤さん

地球温暖化対策として重要なのは、脱化石燃料と再生可能エネルギーの普及です。NGOもグローバル企業にはたらきかけ、脱化石燃料を促しています。また、再エネの時代に向けて動き出しているグローバル企業も増えています。たとえば、アップル社は、米国・カルフォルニア州の風力発電事業に大規模投資を行うことを発表しています。

東日本大震災以降、日本でも再生可能エネルギーは増えていますが、ドイツや中国と比べるとまだまだ少ないのが現状です。そのため地域から、あるいは企業も、「再生可能エネルギー100%」に向けて取り組みを進めることが必要です。

 

化石燃料への投資を撤収することをもとめる国際キャンペーン「グローバル・ダイベストメント・デイ」のため、シンポジウム参加者有志で記念撮影。

化石燃料への投資を撤収することをもとめる国際キャンペーン「グローバル・ダイベストメント・デイ」のため、シンポジウム参加者有志で記念撮影。

 

これらの他にも、シンポジウムでは、再生可能エネルギーや省エネルギー、フロン対策、環境教育など、様々な取り組みが紹介されました。世界は温暖化防止に向けて動き出しています。パリ合意に向けて、日本政府も早急に温暖化対策に関する「明確な目標と方針」を決めることが重要です。私たちNGOも、連携を広げて、市民・企業・政府にさらなる温暖化対策の促進をはたらきかけていきます。