G7サミット閉幕
日本、2015年パリ合意に貢献する意思を示せず

2015年6月8日
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

ドイツのエルマウで開催されていたG7サミットは、8日、世界の温室効果ガス排出削減目標について、IPCCの科学的知見「2010年比で2050年までに40~70%削減」の上端を全ての国と共有することを支持する宣言を採択して閉幕した。長期的な温室効果ガス大幅削減の必要性を踏まえ、今世紀中に世界経済を脱炭素化し、2015年末のCOP21パリ会議で拘束力あるルールを含む合意を必ず成功させるという主要先進国の政治的意思を示したものだ。一方、年間1000億米ドルの気候資金の目標達成の具体的な道筋等、COP21に向けた課題も多く残されている。議長国ドイツのメルケル首相がサミットの最重要議題を気候変動と位置づけていたように、気候変動が国際政治において最も重要な課題となっていることが改めて認識される機会となった。先進国としての責任を果たし、パリ合意を歴史的な成功に導くため、G7諸国にはさらなる努力が求められる。

日本からG7サミットに参加した安倍首相は、パリ合意の成功に貢献する政治的意思もリーダーシップも示せなかった。第1に、安倍首相がサミット中に説明した、2020年以降の温暖化対策の国別目標案(約束草案)の政府原案「2013年比で2030年までに26%削減(1990年比で同18%削減)」は、極めて不十分、不衡平であり、長期目標にも沿わないものである。ドイツのボンで開催中の国連気候変動交渉会議でも、日本を批判する声が高まり、不名誉な「本日の化石賞」を受賞しただけでなく、複数の国際メディアからも石炭・原発依存のエネルギー政策に基づく目標案の実効性を疑問視し、批判する声があがっている。また、G7首脳宣言は、他国に対して目標案の早期提出を呼びかけているが、そのG7で唯一、日本は国連に正式に提出することができていない。途上国も含めたグローバルな新枠組み合意をめざし、先進国が率先して取り組む意思を示すべきところ、これを日本が弱める格好となった。日本政府は、目標案を見直し、「1990年比で2030年までに40~50%削減」という水準の目標案を早期に提出するべきである。

第2に、日本はG7サミットの事前交渉において、2℃目標を実現するため脱石炭の投資基準を作成するプロセスに反対し、長期的な脱炭素目標を盛り込むことにも抵抗したが、これは極めて残念だ。この背景には、海外における石炭火力発電所プロジェクトを支援し、これを拡大させようとする意図があることが窺える。安倍首相は、国内外での石炭推進方針がパリでの野心的な合意を危険にさらしていることを自覚するとともに、世界が石炭を制限する方向にあることを踏まえ、従来の方針を改めるべきである。

COP21でのパリ合意は、化石燃料の時代を終わらせ、再生可能エネルギーの時代の始まりを告げるものでなくてはならない。そのためになさねばならないことはまだ多いが、日本を除く主要国は、パリに向けて取り組みを加速させている。日本は、国際社会の中で取り残され、影響力を失いつつあることを重く受け止めなければならない。

 

プレスリリース「G7サミット閉幕 – 日本、2015年パリ合意に貢献する意思を示せず」(2015年6月8日・CAN-Japan)

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