日本、COP25マドリード会議で2度目の「化石賞」

小泉環境大臣、脱石炭も目標引き上げ意思も示さず、世界の要請にゼロ回答

 

2019年12月11日(日本時間12月11日夜)

Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

 

12月11日(水)、スペインのマドリードで開催されている国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)において、日本政府は、「その日の交渉で、最も後ろ向きな行動や発言をした国」に贈られる、不名誉な「本日の化石賞」を受賞した。化石賞は、世界120カ国の1300団体からなる世界最大の気候NGOネットワークの「気候行動ネットワーク(CAN)」がCOP期間中に授与しているものである。COP25で日本が化石賞を受賞したのは先週に続いて2度目となる。

今回の受賞の理由は、同日のCOP閣僚級会合においてスピーチを行った小泉進次郎環境大臣が、国際社会から求められている気候対策の強化、具体的には脱石炭及び温室効果ガス排出削減目標の引き上げの意思を示さなかったためである。

とりわけ、気候変動の最大の原因のひとつである石炭火力発電からの脱却は、国連環境計画(UNEP)が指摘しているように、パリ協定の目標達成には不可欠である。COP25開幕プレナリー(総会)で、グテーレス国連事務総長は石炭火力発電の利用をやめることを各国に強く求めている。また、先週、「石炭火力発電は選択肢として残したい」との梶山経済産業大臣の発言を理由に、COP25の第1号の化石賞が日本に贈られ、世界中の市民社会から厳しく批判されたばかりである。COP25会場前でも、日本政府が支援する海外の石炭火力発電事業で実際に被害を受けている途上国の市民らによる日本への抗議アクションが連日のように行われている。国内外のNGOから、COP25の日本政府代表団に対しても再三にわたって脱石炭の要請が行われていた。

小泉環境大臣は、スピーチの中で、日本の石炭火力発電政策に国際社会からの批判が集中していることを真摯に認識しているとしながらも、今回のCOPで国内外で石炭を推進している政策について転換する方向性を示すことは全くできなかった。これは、最新の科学的知見に向き合い、気候危機の解決を求める市民、とりわけ若者たちの声に対して、日本政府がこのCOPでゼロ回答を示したものであり、国際社会の脱炭素の努力に水を差すものと受け止められた。それが、COP1週目に続いてCANが2度目の化石賞を日本に贈った理由である。

脱石炭と排出削減目標の引き上げという最も優先される気候変動対策に日本政府が取り組まない限り、いかなる弁明をしても国際社会の批判がやむことはないだろう。それは、日本政府だけでなく、日本のビジネスセクターにとっても深刻なレピュテーション(評判)リスクである。

日本政府は、国内での石炭火力発電のフェーズアウト及び海外向けの石炭火力発電支援を止める方針を明確にし、先進国で最低レベルの削減目標を見直し、引き上げて国連に再提出することを約束すべきである。そのために、日本政府として速やかに国内で、市民社会の参加を確保した政策検討プロセスを開始しなければならない。

 

COP25参加NGOの代表者によるコメント:

平田仁子(気候ネットワーク)

「過去のCOPを上回る勢いで、今回のCOP25でも、日本の石炭火力方針を巡り、アクションや化石賞、新聞広告などを通じた批判が高まっている。途上国の人々は、石炭火力輸出を今すぐ止めるようにと強く要請している。日本政府が、気候危機への取り組みに真っ向から逆行する石炭火力問題に今回のCOP25でも向き合わなかったことは、世界からの失望と怒りを買うものだ。政府はこの化石賞受賞を重く受け止め、NDCの引き上げと共に、石炭火力輸出及び国内の石炭火力の中止に向けたプロセスを速やかに開始すべきだ」

 

早川光俊(地球環境市民会議(CASA))

「日本は現在の温室効果ガス排出量で世界第5位、累積排出量も6位の気候変動の加害国である。12月9日の「未来のための金曜日」の若者たちの記者会見では、先住民や島嶼国の若者が、自分たちが排出する温室効果ガスはほぼゼロなのに、異常気象や野生生物の喪失という事態に直面していることを告発していた。すでに気候変動の影響は顕在化している。加害国である日本は、こうした若者の告発を真摯に受け止め、行動すべきである」

 

小西雅子(WWFジャパン)

「日本では、企業、自治体、市民社会が、それぞれに脱炭素社会に向けて様々な努力をしている。その努力の中には、国際的にも先進的なものもたくさんある。また緑の気候基金へ累積で世界第2位の貢献をしている。それらが日本政府の野心強化に関する消極姿勢や、国内・海外の石炭に対するポジションのせいでかき消されてしまうのは、気候変動問題の解決にとってマイナスであるだけでなく、日本自身にとっても得策ではない。今回の国際社会からの批判に真摯に向き合い、国内での削減目標強化のプロセスを、石炭廃止・石炭輸出廃止検討を含めて再検討することを要請する」

 

以上

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