プレスリリース

IPCC 第6次評価報告書(第3作業部会)の発表を受けて
―日本はあらゆる政策手段を講じ、1.5度目標の実現する脱炭素化を急げ―

2022年4月6日
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

 2022年4月5日(日本時間)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第6次評価報告書の一部をなす第3作業部会(気候変動の緩和)の報告書を発表した。

 世界気象機関と国連環境計画によって設立されたIPCCは、1990年から2013年まで5〜7年ごとに評価報告書を発表している。その科学的知見は、国連交渉を通して各国の気候変動政策に影響を与えてきた。

 この報告書は、気候変動の原因である温室効果ガスを迅速、大幅に削減しなければ、パリ協定が掲げる1.5度目標を達成することはできず、気温上昇は今世紀中に1.5度を超え、今世紀末には3.2度上昇する可能性があると評価した。

 そのうえで、今世紀末までの気温上昇を1.5度に抑えるためには、世界の温室効果ガスの排出量を遅くとも2025年には減少に転じさせ、2030年までには2019年比で43%、2050年までには84%削減しなければならないと結論づけた。
 現実には、すべての国が掲げる現在の削減目標を足し合わせても、2030年の排出量は14%増加すると予測されている。1.5度目標を実現するためには、2030年までの短期間に、大幅な削減が必要である。

 同報告書はまた、1.5度目標を達成する可能性は縮小してはいるものの、今なお1.5度目標の達成が不可能ではないことも示した。エネルギー、産業、運輸、土地利用、建築物などのすべての分野において、2030年までに温室効果ガスを半減させる可能性も、解決策もある。さらに、投資や金融などの資金の流れ、政策や法制、経済制度、技術やイノベーションなどの幅広い分野においても、脱炭素を実現する手法が示された。

 脱炭素化した未来に、化石燃料の居場所はない。石炭火力発電をはじめとする化石燃料関連のインフラをこのまま使い続ければ、1.5度目標を実現することはできない。石炭火力発電はもちろん、石炭火力発電の延命につながる水素・アンモニア混焼だけでなく、すべての化石燃料の消費を大幅に削減する必要があり、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーへの転換による脱炭素社会の実現が明示された。

 日本はこの報告書が示した気候科学の要請を真摯に受け止め、1.5度目標を達成するために、あらゆる政策手段を講じて日本の脱炭素化を加速させ、持続可能な社会へと転換しなければならない。

 CAN-Japanは、日本政府に対し、1.5度目標に整合するよう、2013年比46〜50%とする現在の2030年目標をさらに引き上げ削減目標を引き上げるとともに、あらゆる政策手段を講じて気候変動の解決を図り、石炭火力発電の全廃はもとより、すべての化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を求める。

CAN-Japanメンバー団体からのコメント

エバン・ギャッチ(気候ネットワーク):
 この報告書は、気候変動はわれわれの対策を上回る勢いで加速しており、危険な影響を回避するためには、2050年までにネットゼロを目指すだけでは十分でなく、各国政府がより緊急かつ確固とした行動をとる必要があることを明らかにしました。
 世界最大の排出国のひとつである日本は、より野心的な排出削減目標に引き上げ、その達成を確実にする具体的なロードマップを策定し、政策手段を講じることによって、気候危機の深刻化を回避する相応の役割を果たす必要があります。
 そのためには、温室効果ガスの最大の排出源である石炭火力発電を2030年までに全廃し、再生可能エネルギーに転換していくことが必要です。排出削減につながらず、石炭火力発電を延命させるアンモニアや水素の混焼のような実用化されていない技術は解決策になりえません。

以上

参考)この報告書は、IPCCの第6次評価報告書の一部をなす第3作業部会(気候変動の緩和策)の報告書である。2021年8月の第1作業部会(自然科学的根拠)報告書、2022年2月の第2作業部会(影響・適応・脆弱性)報告書に次ぐ報告書であり、この報告書の発表をもって全作業部会が報告書を完成させた。この3報告書をまとめた統合報告書は、今年9月に発表される予定である。

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【プレスリリース】IPCC 第6次評価報告書(第3作業部会)の発表を受けて ―日本はあらゆる政策手段を講じ、1.5度目標の実現する脱炭素化を急げ―(2022年4月6日)

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