プレスリリース

G7カナナスキスサミットを受けて
ーーG7は結束して、気候変動のリーダーシップを示せーー

2025年6月18日
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

 
 6月15日から17日までカナダのカナナスキスでG7サミット(主要7ケ国首脳会議)が開催され、G7加盟国の首脳は、喫緊のグローバル課題について議論した。

 気候危機の深刻化を受け、近年のG7サミットでは、気候変動の影響を軽減し、パリ協定の目標である産業革命前比で世界の気温上昇を1.5度以内に抑えるために具体的な数値目標を含むコミットメントを採択することが慣例となっていた。

 昨年イタリアのプーリアで開催されたサミットでは、パリ協定の1.5度目標に整合した新たなNDC(国が決定する貢献)の提出、およびCOP28で採択された化石燃料からの脱却と再エネ3倍・エネルギー効率倍増というコミットメントが再確認された。さらに、G7の電力部門を2035年までに完全に、または大部分を脱炭素化するというコミットメントを踏まえ、G7首脳は昨年、2030年代前半までに排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を段階的に廃止することに合意した。

 しかし、「気候変動対策にとって決定的に重要な10年」を強調し、これらのコミットメントを表明してきたにもかかわらず、今年のサミットでは、気候変動が議題から消え、成果文書の代わりに、グローバル・地域安全保障、AIと量子技術、移民、重要鉱物などに関する7つの別々の声明が発表されるにとどまった。

 声明の一つである「カナナスキス山火事憲章」は、過去10年間で「記録的な山火事」が発生したことへの懸念を表明しているが、気候変動については言及されていない。これは、気候変動と山火事の頻度・規模との科学的関連性、および過去10年間が「記録上最も暑い10年間」であった事実を考慮すると、極めて問題である。

 2024年は観測史上最も暑い年であり、産業革命前比で1.5度を超えた最初の年となった。決定的に重要な10年間が続く中、さらなる気温上昇が予測されており、G7には温室効果ガス排出量の削減、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行、開発途上国における公正な移行への支援において、グローバルな取り組みをリードすることが世界から強く求められている。

 

CAN-Japanメンバー団体からのコメント

高田久代(国際環境NGO グリーンピース・ジャパン プロジェクト・マネジャー):
「激化する気候危機は、食糧危機や水不足、災害を引き起こし、社会の分断や軍事衝突の火種ともなります。直接・間接を問わず、気候変動の影響を受けない人はいません。世界第2位の温室効果ガス排出国である米国が気候変動対策に背を向けることは大変遺憾ですが、だからこそ日本政府をはじめとする他のG7参加国や世界の国々が結束を深め、温室効果ガス排出量を削減し、省エネを推進しながら、化石燃料から持続可能な再生可能エネルギーへと社会経済を移行する強力な気候変動対策を実施していくことを強く求めます。気候変動を『ウソ』と発言するトランプ大統領ときちんと対峙し、気候危機を危機としてとらえるべきです。」

伊与田昌慶(国際環境NGO 350.org Japan キャンペーナー):
「日本は、化石燃料ガスへの投資拡大をやめなければなりません。それは、生態系を破壊し、地域コミュニティを危険にさらし、アジアの途上国の債務負担を増やしています。米国との貿易上の取引としてのガス輸入をやめなければなりません。私たちが生き延びるために化石燃料のない未来をうちたてなければなりません。そこに交渉の余地はないのです。日本の石破茂首相は、他のG7首脳に対して、強くしなやかな経済は再生可能エネルギーによって実現しうるということを示すべきです。日本政府は、化石燃料企業の短期的な売上のためではなく、将来世代のニーズに責任を持つべきです」

吉川景喬(WWFジャパン 自然保護室気候・エネルギーグループ):
「今回のG7サミットが気候変動に関する合意文書を示せなかったのは非常に残念です。2024年は観測史上最も暑く、気候変動の対策は一刻の猶予もありません。他方、世界中の企業や自治体などの非国家アクターは、一時的な政治状況に左右されずに対策を継続しています。日本でもSBTiの下で1,700社以上の企業が野心的な温室効果ガス削減目標にコミットし、排出削減に取り組んでいます。また、831の企業や自治体、研究機関などが気候変動イニシアティブ(JCI)に参加し、共同しての政策提言などを行なっています。各国政府に求められるのは非国家アクターの取り組みを先導することです。日本政府はNDCの温室効果ガス削減目標をさらに引き上げるとともに、2030年までに国内で全ての石炭火発の段階的廃止と再エネ3倍化にコミットするべきです。」

早川光俊(地球環境市民会議(CASA) 専務理事):
「2024年の世界の平均気温は工業化以前から1.55℃上昇したとされ、初めて1.5℃を超えた。気候変動は急速に進んでいる。こうした状況で開催されたG7カナナスキスサミットが、気候変動問題に対しまったくメッセージを発信できなかったことには、大きな失望を感じざるを得ない。またカナナスキス山火事憲章では、世界中で記録的な山火事が発生していることに『深刻に懸念する』とし、『科学的研究及びローカルな知識に基づいた緩和と適応のための方策を実施』するとするが、気候変動がその一因であることの言及はない。アメリカのトランプ政権が、気候変動問題に後ろ向きの対応をしていることに対し、G7諸国は結束して気候変動に対処すべきであり、気候変動問題の原因者としての責任を果たすべきである。」

浅岡美恵(気候ネットワーク 代表):
「気候危機がますます深刻化するなか、今回のG7サミットで首脳たちから気候変動対策の強化や化石燃料フェーズアウトに関するメッセージが発信されなかったのは非常に残念です。
しかし、昨年までのG7で合意された『2035年までの電力部門の脱炭素化』や『2030年代前半までの石炭火力の段階的廃止』に取り組む必要がなくなったわけでありません。日本政府が2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画は、『脱炭素』とは名ばかりで、原発・石炭火力維持温存の従来のシステムから何ら脱却できず、大幅削減にも程遠いものです。また、同月に提出されたNDCはパリ協定の1.5℃目標に整合しているとは言えません。アメリカが化石燃料を重視する方向に舵をきった今こそ、G7の一員として、日本が排出削減目標を引き上げ、化石燃料の廃止、再生可能エネルギーの拡大、省エネルギーの徹底へと転換することをあらためて求めます。」

 

 

お問い合せ先

Climate Action Network Japan(CAN-Japan)事務局
〒604-8124京都府京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305気候ネットワーク内
TEL: 075-254-1011/FAX: 075-254-1012
ウェブサイト: https://www.can-japan.org
E-mail: secretariat@can-japan.org