G7サミット開催にあたってのCAN-Japanメッセージ

全ての化石燃料からのフェーズアウトと
再生可能エネルギー100%への公正な移行への最大限のコミットを

2023年4月7日
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

 

 CAN-Japanは、2023年G7サミットにおいて、議長国である日本政府が、パリ協定がめざす1.5℃目標を達成するために、全ての化石燃料からのフェーズアウトと再生可能エネルギー100%への公正な移行に向けた議論をリードしていくことを求めると同時に、国内の関連政策を見直し、実効性のある施策を策定・実行することを求める。

 

全ての化石燃料からのフェーズアウトの約束を

 気温上昇を1.5℃に抑えるために残されたカーボンバジェットはわずかであり、G7各国が率先して全ての化石燃料からのフェーズアウトを確かなものとする必要がある。具体的には、以下のように、2022年G7エルマウサミットで合意された内容を、さらに強化・前進させる合意が求められる。

  • 2022年のG7首脳コミュニケで再確認された「2025年までに非効率な化石燃料補助金を廃止する」を徹底する。
  • 2022年のG7首脳コミュニケの「2035年までに電力部門の全部または大宗(fully or predominantly)を脱炭素化する」コミットについて、「2035年までに電力部門の全部の脱炭素化」へと強化する。
  • 2022年のG7首脳コミュニケでの「排出削減措置の取られていない石炭火力発電所を廃止」について、これをパリ協定の1.5℃目標を整合する具体的なフェーズアウト年限を示した約束へと強化する。
  • 発電部門における水素・アンモニア混焼技術は未だ商用化に至らず、排出削減効果が小さく、技術開発途上でパリ協定1.5℃目標のタイムラインにも整合しない。この技術を排出削減対策(abatement)として定義すべきではない。
  • 2030 年までに高度に脱炭素化された道路交通部門へのコミットを維持する。このためには、まだ脱炭素化が困難な分野が多いことを踏まえ遅くとも2030年までに、乗用車と商用車の新車販売はすべてZEVとする目標を設定すべきである。

 

再生可能エネルギー100%への公正な移行に最大限のコミットを

 再生可能エネルギーは、すでに各国で実用されており、コストも低下している。再生可能エネルギーの活用はエネルギー自立へとつながり、気候変動対策としても、昨今の化石燃料価格高騰への対応としても合理的である。このため、再生可能エネルギーへの公正な移行に政策・財政的資源を集中させていくことが望ましい。他方で、現在、日本政府が推し進めている原子力発電、また、石炭火力のアンモニア混焼やガス火力への水素混焼、CCS活用を脱炭素技術と称して推進するべきではない。

 また、G7各国には、自国における再生可能エネルギーの普及・拡大に留まらず、JETP等の国際協力のもと、世界的な再生可能エネルギーへの公正な移行を推進することが求められている。途上国への技術支援、投資や補助金は再生可能エネルギーの拡大に振り分けられるべきである。なお、再生可能エネルギー100%の実現には省エネも欠かせない。その一層の推進に向けた施策を併せて実施すべきである。

 

「誰一人取り残さない」観点からの適応・ロス&ダメージ支援を

 気候変動による被害が国内・世界で既に多発しており、気候変動による被害を防ぐ適応策の強化も不可欠である。また、適応策によっても回避しきれない損失・損害が生じてきており、ロス&ダメージ対策への支援強化も必要となっている。G7各国内の適応政策・野心・行動を強化するとともに、気候変動の悪影響を受けやすい「国内外の脆弱な人々・コミュニティ・脆弱な国々」に対する適応策・ロス&ダメージ対策支援を求める。

 

平和構築にもつながる気候変動対策を

 気候変動と平和構築は切り離せない課題である。ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとした軍事活動は、人道的危機を引き起こしただけでなく、気候変動への悪影響、世界的なエネルギー危機、食糧危機、肥料危機をもたらした。軍事行動による大量の温室効果ガス排出が気候変動に悪影響を与えるだけでなく、化石燃料の輸入に依存することは、地政学的リスクを高めることも露呈した。

 戦争による数少ない被爆地の一つであり、今なお被害に苦しむ人々がいるなか、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を訴えるヒロシマの地で開催されるG7サミットに際し、一刻も早い戦争終了への国際的な努力とともに、エネルギー自立のため再生可能エネルギー普及拡大への最大限のコミットを宣言することを求める。

 

日本のGX基本方針は脱炭素に貢献しない

 2023年2月、日本政府はGX基本方針及び関連法案を閣議決定し、現在は国会での審議が行われている。今後10年の日本のエネルギー政策を方向づけるものであるにもかかわらず、国民的議論が極めて不十分なまま決定された。

 GX基本方針のもと、原子力発電や燃料アンモニア、水素、CCSなどが推進されることになっているが、原子力災害のリスクを常に伴う原子力発電は推進すべき温暖化対策とはなりえない。また、石炭火力発電所へのアンモニア・水素混焼やCCSの活用は排出削減効果が小さく、かつ技術開発途上でパリ協定1.5℃目標のタイムラインにも整合しない。さらに、GX移行債でこれら技術への投資支援をおこない、その償還財源としてカーボンプライシングを導入するのは、脱炭素に貢献しないだけでなく産業競争力の低下を加速させる事にもなりかねない。

 すでに実用段階にあり、コスト低下も進む再生可能エネルギーへの移行、及び省エネ技術の一層の普及・向上に政策・財政的資源を集中させ、真のグリーントランスフォーメーションを目指すべきである。

 

以上

 


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G7サミット開催にあたってのCAN-Japanメッセージ 全ての化石燃料からのフェーズアウトと再生可能エネルギー100%への公正な移行への最大限のコミットを―(2023年4月7日)

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