声明

IPCC 第6次評価報告書 統合報告書の発表を受けて
―日本は1.5℃目標に逆行する方針をただちに転換し、
国際社会に対する責任を果たすときだ―

2023年3月24日
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

 2023年3月20日(日本時間)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第6次評価報告書の統合報告書を発表した。

 世界気象機関と国連環境計画によって設立されたIPCCは、5〜7年ごとに評価報告書を発表している。その科学的知見は、国連交渉を通して各国の気候変動政策に影響を与えてきた。

 2014年に発表された第5次評価報告書から約8年半ぶりとなるこの報告書は、2021年から2022年にかけて3つの作業部会が発表した報告書の中から重要な科学的知見を再提示するとともに、パリ協定に基づいて各国が5年ごとに策定する削減目標の新たな指針を明記した。

 統合報告書は、人間活動が温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしたことが疑う余地がないことを再確認し、温室効果ガスの排出量は現在も増加し続けており、世界各地で極端現象を引き起こし、損失と損害をもたらしていると評価した。

 2021年10月時点で各国が提出した「国が決定する貢献(NDCs)」を足し合わせても、今世紀中に1.5℃を超える可能性が高い。パリ協定が掲げる1.5℃目標を達成するためには各国の削減目標も資金フローも不十分である。しかし、世界の平均気温上昇を50%の割合で1.5℃未満に抑えることは可能であるとし、2019年比で温室効果ガス排出を2030年までには43%、2035年までに60%、2050年までに84%削減する指針を示した。

 また、適応に関しても、現在の資金フローは、特に途上国において不十分であり、実施の制約となっていることを指摘した。

 現状や将来のリスク等の分析を受け、本報告書では、この10年間での大幅、急速かつ持続的な緩和策および適応策の加速により、人間や生態系に対して予測される損失と損害が軽減されるとして各国の行動を促すとともに、気候変動対策に資金を振り分け、十分な資金を動員すること、国際協力が重要であることを強調している。

 CAN-Japanは、この統合報告書の内容を真摯に受け止め、日本政府に対し、最新の気候科学に基づいた政策に転換することを求める。

  • 2030年目標を確実に達成し、1.5℃目標に整合した目標の引き上げと実現を図ること。
  • 2024年末に開催されるCOP29に提出する2035年目標の策定に向けた取り組みを開始すること。
    先進国としての責任を果たすため、2035年までに60%削減を上回る目標を掲げること。(注)
  • 世界最大規模の化石燃料補助金を廃止し、省エネや再エネなど費用対効果が高く、確実な削減につながる対策に振り向けること。
  • 既存の化石燃料インフラに由来する排出量は残余のカーボンバジェットを超えるため、石炭火力発電をはじめとする化石燃料インフラのすみやかな転換を行うこと。

 本報告書では、「全ての人々にとって住みやすく、持続可能な将来を確保するための機会の窓は急速に閉じられている」「この10年の選択や行動は、現在から数千年先にまで影響する」と警告し、今すぐ、でき得る限りの気候変動対策を講じる必要があることを強調した。これまでにない危機感を国際社会が共有する中、世界第5位の排出国である日本の責務は重い。

以上

注)
パリ協定では、各国が5年ごとに削減目標を国連に提出することを定めている。現在、各国は2030年の削減目標を掲げている。次の削減目標は2024年末に開催されるCOP29までに提出することが求められており、2035年目標の提出が推奨されている。

 

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【声明】IPCC 第6次評価報告書 統合報告書の発表を受けて―日本は1.5℃目標に逆行する方針をただちに転換し、国際社会に対する責任を果たすときだ―(2023年3月24日)

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